私は父親との接し方がよくわからない
父とこれまで喋った言葉の文字数も数える事ができる
小さい頃、他人の家庭がとても羨ましかった
凄く幸せそうに見えたのだ
私の父は母に対して暴力をふるっていた
夜兄弟三人でベッドに入って寝ていると
父が帰ってくる車の音がする
とても恐ろしかった
体が緊張し、硬くなる
家のドアが開く音がする
それと同時に怒鳴り声が響く
必死に寝たふりをする
我慢しても、涙が止まらない
起きていると気づかれてはいけない
そう思って必死に寝たふりをした
翌朝、顔が真っ青に腫れ、それを髪で隠している母を見て、かける言葉もなく、何も知らなかったように振る舞った
ずっと、父を憎んでいた
そんな父も病気になり、入退院を繰り返している
ガリガリに痩せベッドに横たわっている父を見て、それでも何を話して良いかわからない
無言で、ただひたすら時間だけが過ぎていく
結局話したのは、
「おう」と、「じゃあ」
これだけ
何のために見舞いに来たのか
普通に話しをする事に憧れている自分と、どうしても許せない、そう思う自分とがいる
ここまで苦しめてきて、と思う自分と、ここまで大きくしてくれて感謝している、そう思う自分がいる
感謝の気持ちを表すと、許したと思われるんじゃないか、いや絶対許せるはずがない
そんな事を考え、やっぱり何を話せば良いかわからない
父との無言の間のあいだ、ずっとそんな事を考えていた
悔しいけれど、はっきりわかっている事は、世の中どこを探しても、私の父親は、この人しかいないという事
いつかありがとうと言える時が来るのだろうか